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保育園で子どもが喧嘩!親のNGフレーズとは【井桁容子先生に聞く 保育園との付き合い方】#4

親にとっては仕事と育児の両立が始まり、子どもにとっては初めての集団生活がスタートする保育園生活。親子共々初体験の場で起こる心配事とどうやって向き合っていけばいいのか、保育士歴42年・乳幼児教育実践研究家の井桁容子さんに聞く本連載。

前回は、保育園との上手なコミュニケーションの取り方を教わりました。今回は、“お友達関係”について。喧嘩してしまったとか嫌なことを言われたなど、ネガティブな内容にはつい敏感になってしまいますよね。

親が見ていない場所で起こるだけに、家庭ではどんなフォローをすればいいのか聞きました。

Q.特定の子といつも喧嘩になってしまう時、保育園にはどうやって相談すればいいですか? 相手の親への気兼ねもあって聞きづらいことも……。

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【NGフレーズ】「喧嘩をさせないでください」「あの子と一緒に過ごさせないでください」

【OKフレーズ】「どういう時に喧嘩になって、どんな風に終わっていますか?」

「いつも同じ子とぶつかるなら、性格が似ているからということもあります。喧嘩の種類や、原因、成り立ち、そしてどんな形でおさまっているのかを先生にきちんと聞きましょう。

親が事実を知ろうとすることは、子どもを理解する情報を得るために必要なことです。

先生にクレーマーと思われるとか、相手の親に気兼ねすることもありません。もし、保育園に“強いものが勝つので、喧嘩は好きなだけやらせてます”なんて言われたら“止めてださい!!”になっちゃうけど(笑い)。

心が育つためには、ぶつかることも大切。喧嘩をさせないことよりも、ぶつかった時にどんな工夫をして、どんな経験ができているかが、大人になったときに生きてきます。

喧嘩がステップアップしているか、先生任せにせず親も確認を

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「1回目の喧嘩より、2回目の喧嘩の方が進化していないともったいない。

例えば、1回目は友達が使っているものをいきなり取ったから喧嘩になったとします。そうしたら、2回目は貸してもらうために代わりの物を持って行くとか、いつごろ終わって貸してくれる?と交渉する、とか。

物を貸してもらうためにはいろんな方法があると学ぶ大事な機会なのに、先生に引き離されて“ごめんね”と言わされて、“仲直りでしょ!”でおさめられてしまうと、子どもは何回喧嘩をしても成長につながりません。

 親が喧嘩の内容やおさまり方を知ったうえで、子どもが家に帰ってから

“先生は、仲良くしなさい、ごめんなさいでしょって言ったんだ。ぼくは、ごめんなさいなんて言いたくなかったんだ”

ということだったら、“明日、自分で先生に話せる?”と聞いてあげましょう。子どもが言えないということなら、そこは親の出番となるわけです」

『子ども同士のトラブルに大人が“ごめんね”や“いいよ”を言わせることは、子どもの気持ちを抑えつけてしまっている』と以前の連載でも教えてくれた井桁さん。その“大人”が“保育園の先生”になっていないか、喧嘩をした時は、そのおさめ方までの事実確認が親がすべきことなんですね。

子どもが友達の言葉や態度に傷ついた時、先生に相談する? 親が受け止める?

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「〇〇ちゃんに嫌いっていわれた」「〇〇くんに叩かれた」など、いますぐ先生に相談するほどではないように思うけれど、親に軽く受け流されるのは子どもにとってつらいだろうという時、どんな声をかけたらいいでしょうか?

【NGフレーズ】「あの子とは友達にならない方がいいわよ」

【OKフレーズ】「何か嫌なことがあったのかな」「真似はしない方がいいね」

「相手を傷つけるような言葉を使う子っていますよね。大人がびっくりしちゃうような日本語を保育園に持ってくる(笑い)。でも、それも成長の過程です。

私は自分が子育てをしているときも、“その子は、もしかしたらお家でそう言われてるのかな~”とか、“テレビで見てカッコいいと思ったのかな~”と言ったうえで、“あの子には色々あるみたいだから、自分が言われて気持ちのよくない言葉は、真似をしないほうがいいね”と言ってきました。

友達のことは許してあげて、自分の中ではそれは良くないと解釈しておく。そういう考え方を身に付けておくと、人間にはいろいろな面があって、いい人と悪い人に決めつけて分ける必要はないんだとわかるようになります。

嫌な言葉を言われたとき、友達のことが許せなくて“そういうこと言っちゃいけないんだよ!”と言い返すと、ムキになってもっと言ってきたりして、相手との関係も崩れてしまいます。

お父さん、お母さんも、“○○くんに叩かれた”なんて聞いたときに、友達にならない方が……と短絡的に考えないで、相手側への共感を持って色んな角度で物を見るということを、お友達への見方でやってあげるといいですね。

人間にはダメな部分もあるものです。それなのに、親が“清く正しいおりこうさんが好き”という考えしか持たないでいると、子どもが自分の中にダメな部分があると気づいた時、自分のことが嫌いになってしまいますよ」

お友達とのぶつかり合いから人間関係を学べることは、保育園に通っているからこその体験ですね。マイナスにとらえず、井桁さんがおっしゃるように、見方を変えて親も子も成長できる機会だと捉えたいです。

 

次回は、仕事も育児も両立したいけれど、保育園に預けていることを後ろめたく思ってしまう時について聞きました。


 

【取材協力】

井桁容子(いげた ようこ)

 20183月まで保育士として東京家政大学ナースリールムに42年間勤務。現在は、乳幼児教育実践研究家として、全国での講演のほか、『すくすく子育て』(NHKEテレ)への出演、『いないいないばあっ!』(NHKEテレ)の監修も行う。また、20186月に立ち上げた“子供から学び、豊かに生きる”をテーマにした非営利団体『コドモノミカタ』の代表理事を勤めワークショップを開催するなど、保育士からステージを移した後も精力的に活動している。小中学生が職業を学ぶために出版された各ジャンルのスペシャリストが集う『個性ハッケン! 50人が語る長所・短所』(ポプラ社)に、元保育士として登場。

撮影(井桁さんインタビューカット)/黒石あみ(小学館)

【井桁先生の大好評連載】

「叱り言葉より子どもに届く【井桁先生の魔法のフレーズ】」

 

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