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「共働きなのにワンオペ育児」状態はなぜ起こる?夫婦の分担意識だけではない根深い理由

2022年9月に厚生労働省が発表した調査では、仕事を持ちながら児童を子育て中の女性の割合は75.9%と過去最高の割合となりました。共働き夫婦の割合も増加の一途をたどっています。

多くの共働き夫婦は、「家庭の外で働く」「自分が育児をする」「家族に育児をまかせる」の最適なバランスを探っています。

夫婦の育児分担の状況は、各家庭ごとの事情があると思いますが、「仕事をしている母親が、家事・育児を1人で(ワンオペで)担っている」という家庭が少なくありません。

今回は、“ワンオペ育児”の状態を状況を生み出す原因を探っていきます。

母親の「ワンオペ育児」の状況を作り出す4つの原因

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今回、『kufura』編集部は仕事を持つ既婚女性(子どもあり/20~50代)50人にアンケートを実施しました。半数の52.0%が「主に育児をひとりで担う“ワンオペ育児”に該当している(または該当していた)と思う」と回答しています。

“ワンオペ育児”状態を生み出す理由について質問したところ、女性からの回答は4つの理由に集約されていました。

女性の就労形態、就労時間などの条件を設けずに収集した回答から、見えてきた理由とは?

理由1:父親の職場の拘束時間が長い

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“ワンオペ育児”の原因として、最も多かった回答が父親の会社や働き方に関するものでした。

「夕方以降から寝るまで旦那は帰ってこないから」(35歳・総務・人事)

「夫の職業柄、会社から出ていることが多いので、緊急時に帰宅できなかった。田舎の会社が旧態依然だったため、夫も声を上げられなかったのだと思う」(47歳・その他)

「夫が毎日夜遅く(日付が変わる頃の帰宅)まで仕事なので、家にいる時間の多い私が子どもの面倒を見ている」(40歳・その他)

日本企業の中には、複雑な序列があります。総合職と一般職、正規と非正規、上長と平社員などなど。

仮に、総合職の正社員として所属し、ある程度責任あるポジションに就いている場合、労働時間が長くなる傾向があることは否めません。夫が早く帰宅して育児をしたいと願ったとしても、“職場の長時間拘束”という問題が立ちはだることも……。

その場合、育児のピークタイムの夕方~夜にかけての家庭内の育児の担い手は必然的に1人少なくなります。

理由2:母親が融通のきく働き方をしている

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続いて、“夫の労働時間”の問題と地続きでもある母親の働き方に関する回答です。

「夫は帰りが遅い。自分は自宅での自営業なので時間が自由に調整でき、仕事しながら子どもの面倒をみることもできる」(41歳・自営業)

「共働きですが、私が週5回1日6時間しか働かないパートなので、必然的に残業がある主人の仕事に比べ家にいる時間が長く、仕方がない部分があると思います」(38歳・パート)

「私はフレックスで時間に自由が利くから」(36歳・総務・人事)

夫が拘束時間の長い仕事に就いているため、妻が時間を調整しやすい働き方をしている、というケースです。回答者の女性は、残業が発生しにくい仕事を選び、仕事と育児の両立をはかっていました。

過去記事「育児中の働き方。“専業主婦パートフルタイム…経験してみてどうだった?リアルな声を調査」では、ライフステージに合わせて働き方を変えている女性が多く見受けられました。妻が家族の事情に合わせて働き方を変える“調整役”を担い、夫の長時間勤務を支えているケースもあるようです。

理由3:夫婦間の収入格差

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「自分も夫も正社員だけど責任と給料が違うので仕方ないと思っています」(45歳・その他)

「私が子どもを産むために一度仕事を辞めたことで、私の給与が旦那より低くなってしまったからだと思います」(50歳・財務・経理)

「夫とは稼ぎが違う。夫は正社員、私は派遣社員というのもある」(46歳・派遣社員)

夫が職場から望まれている働き方をすると、夫は育児に関わることができない。ゆえに、妻が調整しやすい働き方を選び、“ワンオペ”で育児をする。結果的に、夫婦間の給料格差が生じる。

このようなサイクルが固定すると、必然的に夫婦間の収入格差が固定します。こうした状況について、女性からは「仕方ない」「変えようがない」という声が目立ちました。

理由4:そもそも、夫は育児をしない

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最後は、夫婦の役割分担意識に関する回答です。

「夫は休みの日も予定を詰め込んで家庭を顧みない。子どもと過ごせと何度も言ってきたが本人にその気がなければ意味がない。風呂掃除と月イチの料理で俺は充分にやっているということらしい」(45歳・契約社員・派遣社員)

「男は仕事、女は家庭という昔の考えを曲げないくせに共働きを強要。離婚します」(51歳・その他)

夫が育児をしないとの回答は、全体の1割程度。仮に夫に育児に関わることができる環境があっても子育てを“しない”という回答からは、夫への不満が透けて見えます。

夫は「育児をする時間がない」の回答が最多。その背景にあるもの

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ここまで、共働き家庭において、母親が“ワンオペ育児”をしているケースを掘り下げてみました。

回答を見ると、父親が育児に参加“できない”ケースと、“しない”ケースに分かれています。今回のアンケートでは、時間的な制約から“参加できない”という回答が非常に多く寄せられています。

子どもの生活リズムを踏まえると、育児の“ピーク時間”は、朝の登園・登校前の時間帯と、夕方~22時ころ。

夫の残業が常態化している場合、育児のピーク時間に協力できず、妻側が融通がきく働き方を選択している事例が目立ちました。

近年は、“働き方”に着目する企業が増加しています。しかし、十分な収入を得るためには「硬直的な働き方と長時間拘束が避けられない」というケースも多いと推測されます。

夫婦それぞれの職場文化は、子育て中の家族にも大きな影響を与えています。“ワンオペ育児”は、1つの結果ともいえそうです。

【参考】
2021(令和3)年 国民生活基礎調査の概況

北川和子
北川和子

自治体HP、プレスリリース、コラム、広告制作などWEBを中心に幅広いジャンルで執筆中。『kufura』では夫婦・親子のアンケート記事やビジネスマナーの取材記事を担当している。3児の母で、子ども乗せ自転車の累計走行距離は約2万キロ。地域の末端から家族と社会について日々考察を重ねている。

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