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子どもの汚い言葉、どう対応すればいい?【子育てのアンガーマネジメント#小学生編2】

子どもが汚い言葉、ひどく暴力的な言葉を使うことがあります。中には「死ね!」などドキッとするような言葉も。「やめて!」と言いたくなりますが、こんなとき怒っていいのでしょうか? 講師歴29年、これまで22万人を指導してきた戸田久実先生に、怒りの感情と上手に付き合うための心理トレーニング「アンガーマネジメント」を使った対処法、子どもへの上手な伝え方を教えてもらいました。

「うんち」なら許せる、「死ね」は見過ごせない

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今回は、こんなお悩みを取り上げます。

「子どもがゲームやYouTubeの影響で汚い言葉を使うようになった!」

オンライン対戦ゲームが子どもたちの間で流行り出してから、「ゲーム中にひどい言葉を使うようになって困っている」といったママ・パパの声を聞くようになりました。

小学校高学年くらいになると、対戦相手に対して「死ね!」「ぶっ殺す!」などと言ったり、攻撃的なYouTuberのマネをして「バーカ」「クソが」など乱暴な表現をしたり……。

次第にゲームの中だけではおさまらず、日常生活で汚い言葉を使うようになることも。そんな様子を見ると「今すぐやめてほしい!」とイライラしてしまう方もいるのでは。

「親が使ってほしくない言葉を、子どもがわざと使い始める時期がありますよね。たとえば幼い頃の“うんち”“おしり”などの言葉。親が反応すると、気を引けた!と思って余計に何度も言うものです。

親が恥ずかしい思いをする程度の不快な言葉なら、みんなが通る道だと思って、割り切ることもできるでしょう。大きくなれば、自然とやめるものです」と戸田先生。

でも、乱暴な言葉や見過ごせないようなひどい表現を、友達や親に対して使うようになってしまったら、どうすればいいのでしょうか?

暴力的な言葉を選ぶのは、語彙が少ないから?

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まずは「叱る、叱らないの境界線」を明確にする必要があるといいます。

叱ったほうがいいのは“クソが”など相手を傷つける言葉、そして“死ね”など命に関わる言葉を言ったとき。私も、息子が6年生のとき、友達に“死ね!”と言ったと聞いて、“それは絶対に言っちゃいけない言葉だよ”と真剣に叱ったことがあります。

たとえケンカをしたとしても、選んではいけない言葉がある。特に命に関わる言葉は、他のちょっと下品なくらいの言葉とは明確に線引きをしましょう。そして“もしあなたがそれを言われたら、どう思うの?”と、子どもに考えさせてみてください」(以下「」内 戸田先生)

たとえば「ゲームの中で言うのはまぁ許せる。でも、現実の友達とのやりとりでは使ってほしくない」など、シチュエーションによって叱る、叱らないの境界線が変わることもあるでしょう。その場合も、境界線を具体的に明らかにして、「ここまでは許せるけど、ここからは許せない」と子どもに伝えてみると良さそうです。

暴力的な言葉を使うようになると「性格が怒りっぽくなったのでは」と心配しているママ・パパも多いはず。しかし、子どもが激しい言葉を使ったからといって、必ずしも激怒しているわけではないかもしれません。

戸田先生は「暴力的な言葉を選んでしまう原因のひとつは、子どもの語彙が少ないから」と指摘します。

「少しイラッとした、くらいの段階で、よくゲームの中で飛び交っている一番激しい言葉を選んでしまうのです。だとしたら、小さなことに対して、強く相手を攻撃するような言葉を使わないよう、言い換えの方法を伝えるのもひとつの手です。

子どもが“嫌だな”“腹が立つな”などと感じたとき、怒りのレベルに合うような言葉を選ぶことができるというイメージをもたせること。そして、“悲しい”“悔しい”といった、本来わかってほしい気持ちにも目を向けさせながら、それを言葉にできるよう、少し親がサポートしてあげることはできるでしょう」

言ってはいけない言葉は叱る。そして本当の気持ちを聞く

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それでは、実際にどのようにして子どもと話せば良いでしょうか?

たとえば友達の目の前で、わが子が「クソが!」「キモい!」などの言い方をしたとしたら。「やめなさい!」と一方的に強く言うだけでは、ますます大きな声で子どもが反応してくる可能性もあるでしょう。

「まずは“相手を傷つける言葉は使ってはいけない”と、ちゃんと叱っていいです。その上で“どうしてそう思ったの?”“どうして欲しかったの?”と問いかけてみてはどうでしょう」

「クソが!」ではなく、「〇〇されて悲しかった」。「キモい」ではなく、「〇〇するのが嫌だと思った」。今の自分の気持ちにあてはまる言葉が見つかると、子どもの言葉の選び方が変わるかもしれません。

「すぐには変わらないかもしれません。でも、そのたびに問いかけて、考えさせる。次第に、自分の気持ちを相手に伝えるのにふさわしい言葉を選べるようになるでしょう。それは子どもがこの先、生きていく中で、とても役立つスキルになるはずです」

怒る必要があることには、怒ってもいい。それもアンガーマネジメントの大事な考え方のひとつ。怒る、怒らないの境界線を意識しながら、子どもに伝えていけるといいですね。

次回は、小学生の子どもを持つママやパパから寄せられた「“10歳の壁”、反抗期とどう向き合う?」というテーマを取り上げます。

取材・文/塚田智恵美 イラスト/ayakono

戸田 久実
戸田 久実

アンガーマネジメントコンサルタント、アドット・コミュニケーション(株)代表取締役。日本アンガーマネジメント協会理事。「伝わるコミュニケーション」をテーマに研修や講演を行う。

豊富な事例やアンガーマネジメント、アサーティブコミュニケーション、アドラー心理学をベースにしたコミュニケーションの指導には定評があり、幅広い年齢層が受講している。「アサーティブ・コミュニケーション」(日経文庫)、「怒りの扱い方大全」(日本経済新聞出版)、「『つい怒ってしまう』がなくなる 子育てのアンガーマネジメント」(青春出版社)など著書多数。

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