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無理に洋服脱がせてない? 「叱り言葉」より子どもに届く【井桁先生の魔法のフレーズ】♯2 お風呂イヤイヤ編

言葉を理解するようになった3才前後の子育ての“困った”を解決すべく、保育・子育てカウンセラーの井桁容子さんに実践できるフレーズとともにお話を聞く本連載。

第1回では、朝の「早くしなさい!」コールの解決法を教えてもらいました。今回は、夜にありがちなお着替えとお風呂のイヤイヤについてレクチャーしていただきます!

Q.くたくたな夜、お着替えもお風呂も嫌がって、言うことを聞いてくれません!

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A.お母さんお父さん自身がさっさと済ませたいと思っていませんか? 嫌がる理由を聞いてあげましょう

【夜のお着替え:実践フレーズ】「何が嫌だった?」「どうするといいかな?」

井桁容子さん

「お母さんが“早く終わってほしい”“こんなことに手間暇かけさせないでよ”という自分本位の発想をしていませんか? 子どもからすると、“ヤダ”という事情も理由も聞かれず、“子どもがわがままだ、子どもが悪い”といつも子どものせいにされちゃうんですよね。

でも、“これ、イヤなんだけど”と言っているのにお母さんが聞いてくれないから、“ヤダー!”と強く主張しているだけなんです。それでも何もしてもらえないから、“ヤダー!!”とより大きな抵抗をしないとお母さんはわかってくれない!と思うんですね。最初の“これ、イヤなんだけど”の段階で、“あら、どうして?”と聞いてあげればいいんです」

嫌がる原因は、お母さんの「服の脱がせ方」にあるかも⁉

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「お子さんの上着を脱がせるとき、どうやっていますか? お母さんが下からめくるように脱がせると、子どもにとっては、服が顔にかぶさっている時間が長くなります。

真っ暗になって怖かったとか、口がふさがれて苦しかったとか、鼻水がついてのびちゃったとか、そういう体験がお着替えを嫌いにさせます。上着を脱がせるときは、まず両腕を抜いてから、最後に首を抜いてあげると、顔を覆われる時間は一瞬で済みますよ」

イヤイヤの悪循環の仕組みは?

「お着替えとお風呂はセットなので、お風呂を嫌がるのは、実は着替えが嫌だからという場合もあります。他には、お湯が熱かったとか、シャンプーが目にはいって痛かったとか。

さっさと済ませようと思って子どもの立場を考えない無神経な行動をしていると、子どもは過去の体験を忘れられず、イヤイヤがおさまりません。そうするとお母さんも怒鳴り口調になり、子どももますます頑なになり……という悪循環になってしまいます」

井桁さんのお話を聞いていると、筆者はかって子どもの頭を洗うとき“そのうち慣れるから!”と遠慮なくシャワーかけて泣かせたことが悔やまれます……。

信頼が積み重なる「幼児とのコミュニケーション法」

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井桁さんが先日まで42年間勤めた保育施設では、2歳前後の子どもの鼻水をふくときでさえ、きちんとコミュニケーションをとっていたそうです。「家では絶対に鼻をふかせないで“ヤダ!”っていうのに、先生にはおとなしく待ってまでふいてもらうなんて!」とお母さんが涙ぐんだというやりとりを紹介します。

井桁さん:「お鼻が出ちゃったね」

子ども:「うん」

井桁さん:「お鼻出てたの知ってたんだ~。そしたら、お口にはいっちゃうから、ふく?」

子ども:「うん」

井桁さん:「自分でふく? 私がふいてもいい?」

子ども:「(“ふいて”というそぶりで鼻を突きだす)」

井桁さん:「じゃあ、ティッシュ持ってくるから待っててくれる?」

子ども:「(鼻を突きだしたまま待って、井桁さんに拭いてもらう)」

「お母さん達は、“鼻が出た、えいっ!”ってふいちゃうでしょう? 子どもにふくかどうか聞くのに3秒もかかりませんよね。それを惜しんだことで、毎回“イヤイヤ”に遭うわけです。“急がば回れ”、ですね。こうやって信頼を積み重ねていくことが大事。子どもはね、積み重ねた信頼を絶対に裏切らない! それが子どもの素晴らしいところです」

子どもの“イヤイヤ”から、子どもの素晴らしさを説いてくれた井桁さん。”イヤ“を封じ込めようとすると、子どもとの信頼関係が崩れていくことがよくわかりました。”イヤ“と言われたら、信頼を積み重ねるチャンス到来! 子どもの気持ちを聞けるようなやりとりをしたいですね。

次回は、一日の母業務の締めくくり”寝かしつけ“について。「鬼が来るよ!」なんて脅していませんか?


【取材協力】

井桁容子(いげた ようこ)

保育・子育てカウンセラー。東京家政大学短期大学部保育科を卒業後、同大学が併設する乳幼児の保育・研究を実践する保育施設に42年間勤務。20184月より保育の現場からステージを移すことになり、全国での講演のほか、『すくすく子育て』(NHKEテレ)への出演、『いないいないばぁっ!』(NHK Eテレ)の監修も行う。著書は、『保育でつむぐ子どもと親のいい関係』(小学館)など多数。男女の母でもある。

撮影(井桁さん)/黒石あみ(小学館)

取材・文/駿河真理子

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