子育て世代の「暮らしのくふう」を支えるWEBメディア

うちの子…また夜更かし!専門家に聞く「子どもの睡眠時間」年齢別の目安は?

「子どもが寝るのはいつも夜10時半すぎ」「夜更かしするから朝なかなか起きられないみたい」……乳幼児や小学生を持つ母親から聞こえてくるのは、睡眠をめぐる悩みです。母親が仕事をしている場合など、親のペースもあってついつい遅くなってしまう就寝時間ですが、月齢や年齢によって理想の睡眠時間はあるのでしょうか。

『kufura』では、子どもの睡眠時間や睡眠不足が体に及ぼす影響などについて明治薬科大学リベラルアーツ准教授(心理学)の駒田陽子さんに聞きました。

夜10時過ぎまで起きている3歳児はおよそ3割

null

ヒトは誕生してから数年間は、体も脳も大きく変化します。睡眠と覚醒のパターンは、生活のリズムができて月齢を経るにつれて、次第に睡眠が夜の時間帯がまとまってきます。

ところが親の間では「うちの子、夜更かしで寝てくれない」という声もよく聞きます。疲れているはずなのに、寝ない子……。実は、日本の子どもの睡眠時間は、欧米の子どもたちと比べて危機的状況にあるようなのです。

日本小児保健協会の調査によれば、3歳児が夜10時過ぎまで起きている割合は、1990年に36%、2000年には52%と過半数を突破しました。その後、文部科学省が旗振り役となった「早寝早起き朝ごはん」運動が好影響を及ぼし、2010年には31%にまで減りました。それでも依然として日本は夜更かし社会であり、子どもへの影響を懸念する声は根強くあります。

世界17の国で0-3歳の子どもの養育者に行った、「就寝時刻と総睡眠時間の国際比較」(2010年)では、ニュージーランドが午後7時28分就寝で総睡眠時間は13時間以上。対する日本は、午後9時17分就寝で11時間37分と差が出ています。地域によって気候や生活習慣の違いはあるにせよ、1時間以上もの差があるのは、驚きです。「どうしても寝ないから……」と夜更かしする子どもを放っておいても問題はないのでしょうか。

子どもの「睡眠負債」を貯めないために

null

「脳や体が劇的に変化する時期はより多くの睡眠が必要です。眠りは栄養とともに、脳の成長に影響するからです。月齢が上がり、昼寝が少なくなって夜の睡眠に集約されるようになると、夜の睡眠時間がより大事になります。

お母様がたは、質の良い睡眠が子どもにとって大事なことだとはわかっているけれど、家事もあってなかなか早い時間に寝かしつけることができません。しかし、できる限り、睡眠時間を確保する努力をしてみてください」(以下「」内、駒田さん)

駒田さんは研究者としてだけではなく、子どもの睡眠習慣に悩んだ母親としての反省から、そう話します。

子どもがなかなか寝ない3つの要因

null

では子どもがいつまでたっても眠れない原因はどこにあるのでしょうか。駒田さんによれば、大きく分けて3つあるそうです。

(1)子どもとのスキンシップを重視

まずは共働き家庭が増え、帰宅時間の遅い両親が、子どもとのスキンシップをとっていて就寝時間が遅くなってしまうケース。大人たちは夜型化しているので、子どもの夜更かしも気にならない傾向もあるようです。

そして夜遅くまで、煌々とした光の下で生活していることで、子どもの体内時計が昼だと誤解して、夜眠れないケースに陥っているのです。

(2)保育園の昼寝の影響

さらに就学前の年齢の高い幼児では、保育園の昼寝によって、夜眠れなくなるケースも出てきます。

「2歳まではほぼ100%の子がお昼寝をしますが、3歳になると半分、4歳で6-7割がお昼寝をしなくなります。5歳では9割のお子さんは眠らなくても大丈夫になるのです。お昼寝がいらなくなった子が午後に2時間寝たら、夜眠れなくなるのは当然です。

昼寝と夜更かしの相関関係もあり、東京都内の保育園では年齢の高い子はお昼寝をしなくてもいいという園の方針で昼寝をやめたところも出てきています。今後は、保護者と園が昼寝について話し合うことも必要になってくるかもしれません」

(3)スマホやテレビの影響

また、注意すべきは、寝ようとしているときに、テレビやスマホなどに“子どものお守り”をさせていないかという点です。食事の後、キッチンを片付けようと、子どもにDVDを見せたり、スマホやタブレットを渡して、せがまれるままに自由に見せている親も多いかもしれません。

「子どもの目は澄んでいて、光の透過率が高いのです。小さな画面を見て集中し、ブルーライトの光刺激が脳にたくさん届いてしまい、眠りを妨げて、眠れなくなってしまいます。就寝前は特に脳を光で刺激しないようにしましょう」

月齢や年齢別の適正な睡眠時間が知りたい!

null

気になるのは、月齢や年齢別の適正な睡眠時間です。まずは、下記に従って実際にお子さんの睡眠を整理してみましょう。

1:夜、ふとんに入る時間はだいたい何時頃ですか?

平日   時    分頃

休前日  時    分頃

 

2:朝、起きる時間はだいたい何時頃ですか?

平日   時    分頃

休前日  時    分頃

「このようにわが子の平均的な睡眠の時間帯と睡眠時間を把握することが大事です。母親は子どもが十分に眠っていると思っていても、就寝と起床が遅い時間帯であるなど、書き出すことでわかってくることもあります。

日本ではこれまで、幼児の睡眠時間はこれくらい、小学生の睡眠時間はこれくらいというと、それに親が縛られてしまうので理想の時間を規定するのはよくないと言われてきました。しかし国際比較でも日本は、睡眠時間が不足していると言えるので、大まかな目安時間を公表するようになってきました」

目安になる理想の睡眠時間は、以下の通りです。

0-3か月・・・14-17時間

1-2歳・・・11-14時間

3-5歳・・・10-13時間

6-12歳・・・9-11時間

14-17歳・・・8-10時間

(National Sleep Foundation in USA,2015 )

小学生では、9-11時間。中高校生でも理想の睡眠は8-10時間です。親の手を離れ、自分でコントロールする年齢になっても、思っていた以上に長い睡眠時間が必要なことが分かります。

ちなみに、仕事に育児に忙しい40代の女性の理想の睡眠時間は7時間以上ですが、実際は6時間半というデータが出ており、女性の中ではいちばん短い睡眠時間となっています。

子どもを寝かしつけるときに一緒に寝てしまい、あとで起きて家事をやった経験のある母親たちも多いはずです。駒田さんによれば「家事や仕事のために一度起きると、後半の睡眠の質が悪くなります。夜はまとめて寝て、朝起きて作業するほうが、効率が良いと思います」とのこと。眠りの問題は、親も子も同じなんですね。

 

次回は、なぜ子どもの睡眠不足を防ぐべきなのか。成績や心の発達にどう影響を与えるのか。良い睡眠の習慣づけの方法を考えていきます。


【取材協力】

駒田陽子・・・明治薬科大学リベラルアーツ准教授(心理学)。日本学術振興会特別研究員、国立精神・神経医療研究センター特別研究員、東京医科大学睡眠学講座准教授を経て現職。

pin はてなブックマーク facebook Twitter LINE
大特集・連載
大特集・連載