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次の3つのうち睡眠負債かもしれないのはどれ?

Q 次の3つのうち、睡眠負債の可能性があるのはどれでしょう?

A 通勤電車でぐっすり眠っている
B 布団に入るとすぐに寝入ってしまう
C 毎日昼寝を30分以上とっている

現代人の睡眠時間はどんどん減っています。厚生労働省による平成27年国民健康調査によれば、平成17年からの過去データと比較して、1日の平均睡眠時間が6時間未満の割合は過去最大となっています。また、6時間未満の人で「日中、眠気を感じた」人は男性44.5%、女性48.7%と、ほぼ半数近くの人が睡眠不足を感じているようです。

こうした睡眠不足の状態を睡眠負債といい、睡眠負債に陥った体は、肥満、生活習慣病、うつ、がんなどのリスクが高まるといわれています。

睡眠不足かどうかを判定する基準が日中の耐えがたい眠気であり,アテネ不眠尺度(参考記事「あなたの睡眠をチェックする」)の設問のひとつ「日中に眠気を覚えるか」が利用できます。

睡眠は夜にしっかり深く、できれば7時間は眠りたいもの。その眠りが足りないと、通勤電車でもうとうとしてしまいます。

また、睡眠は睡眠欲求をしっかり高めてこそしっかりとれるものなので、夕方から夜にかけて再び電車の中でうとうすれば、睡眠欲求がそこで少し解消されてしまい、しっかり夜寝ることができなくなります。そして翌朝、寝不足のまま通勤電車でまた寝てしまうという悪循環に陥ります。

同じ理由で、昼寝は必ず午後2時までにとり、その時間も20分までにしましょう。遅すぎる昼寝や20分以上の昼寝は、睡眠欲求を削減させてしまいます。(参考記事「よい睡眠のために、昼寝はいつ、何時間する?」)

また、布団に入っている時間を臥床時間、寝ている時間を睡眠時間といい、睡眠時間を臥床時間で割って100を掛けたものを睡眠効率といいます。

たとえば臥床時間は7時間(420分)だけれども、寝つくのに30分、起きてから30分ベッドにいたとすると、睡眠効率は360÷420×100=85.7%となります

一般的に睡眠効率が85%を越えることはいいことです。ただ、なかには85%を越えていても日中に支障が出ている人がいます。そういう人はおそらく睡眠不足つまり睡眠負債を抱えています。

このように、A・B・Cのどれが該当しても、睡眠負債に陥っている可能性があります。

寝不足だと感じないことが怖い

怖ろしいのは、睡眠不足は慣れるということです。たとえば7時間以上の睡眠時間が必要な人が、6時間の睡眠時間しかとれないとしても、それが続くうちに慣れてしまうのです。

体は確実に疲れやすくなったり、うとうとが増えたりしても、なかなかそれを自覚することができません。そのうち体に深刻な症状が現れてくるのです。

6時間睡眠が2週間続くと、徹夜を二晩したのと同じくらいになるという調査結果もあります。それでいて、自覚がないのです。

日中眠気を感じるなら睡眠不足。少し睡眠時間を増やして、様子を見るようにしましょう。

◎この記事は、岡島義(おかじま・いさ)先生(東京家政大学准教授)の著作『4週間でぐっすり眠れる本─つけるだけで不眠が治る睡眠ダイアリー』(さくら舎刊)をもとに、岡島先生へのインタビューを交えて構成しています。岡島先生がNECソリューションイノベータと開発したスマートフォンアプリ「睡眠日誌」も無償で提供されていますので、ぜひ本を見ながら睡眠記録を取りましょう。

岡島 義(おかじま・いさ)
東京家政大学人文学科准教授 臨床心理士・専門行動療法士・産業カウンセラー
1979年東京生まれ。日本大学文理学部心理学科卒業、北海道医療大学大学院心理科学研究科博士課程修了。博士(臨床心理学)。公益財団法人神経研究所附属睡眠学センター研究員、同研究所附属代々木睡眠クリニック心理士、東京医科大学睡眠学講座兼任助教、医療法人社団絹和会睡眠総合ケアクリニック代々木主任心理士等を経て現職。睡眠障害や気分障害、不安症を認知行動療法により改善する研究を行っている。著書に『4週間でぐっすり眠れる本』(さくら舎)、共著に『認知行動療法で改善する不眠症』(すばる舎)、『不眠の科学』(朝倉書店)。NHKスペシャル 「睡眠負債が危ない~“ちょっと寝不足”が命を縮める~」を始め睡眠番組への出演も多数。

取材・文・写真/まなナビ編集室(土肥元子)

(初出 まななび 2018/04/29)

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