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虫歯治療の詰め物やかぶせ物。最新の種類と長持ちさせるための生活習慣は?【オトナのための歯科相談室#5】

虫歯治療で使われる詰め物やかぶせ物にはどんな種類があるのでしょう? 少しでも長持ちさせるには、どのようなことに気をつけたらいいのでしょうか? 地域密着型の歯科医院の院長として、お子さんからご高齢の方まで、歯の健康管理と治療を行ってきた歯科医の山本伸彦先生による大人の歯科相談室、連載第5回は、「虫歯治療で使われる詰め物やかぶせ物」について教えていただきました。

虫歯を治すときの詰め物やかぶせ物。その違いは

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この連載の初回の記事でご紹介した通り、虫歯は進行してしまうと自己修復できません。虫歯に侵された部分を削り、詰め物やかぶせ物で修復する治療が行われます。どんな修復方法があるのか、虫歯の進行度合いとともにみてみましょう。

インレー初期の虫歯の修復や、臼歯と臼歯の間の修復に用いられる方法。歯の神経を残したまま虫歯に侵された部分を削って型を取り、その型をもとに人工の詰め物(インレー)をつくってはめ込みます。

クラウン比較的大きい虫歯の治療や根管治療(歯の神経の治療)により、歯冠部分がなくなった歯の修復に用いられる方法。人工の歯冠(クラウン)をつくり、残っている歯(土台)にかぶせます。

虫歯の進行度が浅い場合は詰め物(インレー)、進行していくとかぶせ物(クラウン)を用いると考えるとよさそうです。

詰め物やかぶせ物の素材にはどんなものがある?

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みなさんの口の中には、インレーやクラウンが入っていますか? それらはどんな色をしているでしょうか?

かつてはインレーやクラウンの場合、金銀パラジウム合金もしくは銀合金といった金属が使用されていました。しかし、現在はCAD/CAM(キャドカム)でのインレーやクラウンの適応範囲が広がってメタルレス化が進み、金属を使用せずに治療を受けることが可能になってきております。詳しくは、主治医の先生にご相談ください」(以下「」内、山本先生)

インレーやクラウンの材料には、下記のようなものがあります。

CAD/CAMは、コンピュータ制御によってインレーやクラウンを製作するシステム。今まで通り、歯型を印象(型取り)するか、3D光学カメラで患部を撮影し、それをコンピュータ上で設計したデータをもとに削り出します。

金属アレルギーの心配がなく、保険適用で白い見た目ですが、歯科医が形成する土台の形が適正なものでないと、硬いものを噛むと割れる可能性があります。また、経年劣化で着色する可能性があります。

CAD/CAMは登場して5年ほどなので、今後どのように変化していくか追いかけているところです。今のところ、適正な形にきちんと作っていて、噛み合わせを整えていれば、すぐに割れたりとか取れたりという問題は起きていないですね

昔はよく見かけた金歯や銀歯。今でも使われている?

昔はよく使われていた金歯や銀歯。ママ世代の私たちは、祖父母が金歯を入れていたという人も多いのでは? 金はとても高価なものですが、なぜ歯科治療に使われていたのでしょう。

例えば、金箔がお料理にも使われているように、金は人間の体に入れても害がないんですね。しかも、20カラットくらいの金合金は天然歯に近い硬さで、噛み合わせという意味では、体にやさしい材料なのです。それをご存じの方は、今でも金で奥歯を治したがります

しかし、近年は金の価格が高騰しているうえ、金属以外の選択肢も増えてきています。今後の歯科治療はどうなっていくのでしょう?

現実問題として、金属のインレーやクラウンの製作コストはすごく高くなっています。また、世界的にみると銀歯で治療しているのは日本人ぐらいでは?と言われることもあります。金属は耐久性はありますが、今後の流れとしてはメタルレス、金属で治さない方向にシフトしていくと思います

セラミックは持ちがいい?

クラウンを作るとき、医師から「持ちがいいから」とセラミックを勧められたことはありませんか? セラミックはもともとは陶磁器を意味するもの。陶磁器よりもさらに硬く、熱や衝撃にも強く作られているとはいえ、なぜ「持ちがいい」といわれるのでしょう?

例えば、金属やレジン製のクラウンの場合、磨いてツルツル&ピカピカになったと思っていても、微生物レベルの目で見ると、表面が結構ギザギザしていたりザラザラしていたりして、色やプラークがつきやすいんですね

一方、セラミック製のクラウンは、表面のツルツル度合いが優れているため、色やプラークが非常につきにくいそう。

そういう意味では、セラミックは衛生面で有利な材料であるといえるでしょう

インレーやクラウンを長持ちさせるには?

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では、詰め物やかぶせ物を長持ちさせるには、どのようなことに気をつければいいのでしょう? キャラメルやガムなどを食べていて、詰め物やかぶせ物が取れてしまった経験がある人も多いはず。あれは、詰め物やかぶせ物の寿命がきたのだと思っていたのですが、実は違う原因のことも多いそう。

「キャラメルなどで取れてしまった!という場合、詰め物やかぶせたクラウン自体の耐久性というよりも、歯とくっつけるためのセメントや接着性のレジンなどが劣化してきて取れてしまったというパターンがほとんどですね

山本先生によると、インレーやクラウンの寿命は、使っている人の噛み合わせや習慣、口腔内の衛生状態によって左右されてしまうのだそう。

もちろん、歯医者さんのスキルも重要です。インレーやクラウンは物理的に安定する形に作られていて、きちんと結合していれば、銀だろうがセラミックだろうが、簡単には壊れませんし、取れないはずなのです。あとは、みなさんが普段からどれだけ口腔ケアをするかで持ちは変わってくると思います

 

インレーやクラウンを長持ちさせるためにも、これ以上虫歯を増やさないためにも、毎日しっかり歯を磨いて、定期的に歯科健診を受けるようにしましょう。

 

取材・文/清瀧流美

山本伸彦
山本伸彦

やまもと歯科 院長/デンタルネットワーク株式会社代表取締役/歯科医

都立目黒高校卒業後、レストラン勤務を経て、明海大学歯学部入学。1995年、同大学卒業。歯科医師免許を取得。南青山友歯会ユーデンタルクリニック勤務を経て、1999年、やまもと歯科(東京都)開設。2018年、デンタルネットワーク株式会社設立。歯科専門情報サイト「Smile Teeth」を立ち上げ、多くの人に歯科医療に関する正確な情報を提供している。

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