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朝起きるのがツライ…原因はスマホ夜更かし!? 働く女性の睡眠問題

家事や育児に仕事……慌ただしい毎日の中、ついつい深夜に自分のための時間を過ごしてしまい睡眠時間を削ってしまっていませんか? 睡眠不足になるだけではなく、知らず知らずのうちに「夜型リズム」になってしまう人が増えているんです! そんな働く女性の“睡眠問題”について、『睡眠総合ケアクリニック代々木』の医師・柳原万里子先生に教えてもらいました。

夜更かしすると、夜型になって眠れない!

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アンケート 睡眠不足

『kufura』が20〜40代の既婚有職女性約200人に、「睡眠不足の原因」についてアンケートをとったところ、睡眠時間を削って趣味のことをしたり、スマホを見たりしている人が多数でした。

また、睡眠に関する悩みでは「朝スッキリ起きられない」がトップに。その下には「夜中に目が覚めてしまう」「寝付きが悪い」と続きました。

「睡眠不足であればすぐにでも入眠できるはずなのに、なかなか眠ることができず、夜中に目が冴えてきてしまう。そして朝はかなり起きづらい。実は睡眠不足に加えて、睡眠習慣の問題から遅寝遅起きの“夜型リズム”になってしまう人が増えています。

私たちの身体にも時計があります。地球の時計は24時間で一周しますが、私たちの体内時計は地球より長くて約25時間。環境や生活習慣の影響を受けながら、毎日、地球の24時間のサイクルに合わせて体内時計をリセットしながら生活をしています。

体内時計のリセットがうまくいかなくなると“望ましい時刻に入眠・覚醒ができず、社会生活へ支障をきたす状態(概日リズム睡眠障害)”になります。朝に起きづらく、日中眠いにもかかわらず夕方以降は目が冴えてきて、夜になってもうまく寝付けない。そんな場合には体内時計のリズムが夜型へずれてしまっている“睡眠相後退障害”の可能性があります。夜更かし型の人に多いことが特徴です」

朝スッキリ起きられないのは睡眠不足のせいと思っていましたが、夜更かしも悪いのでしょうか?

「体内時計のリセットの鍵となるのが、“光”の刺激と“メラトニン”。“メラトニン”は目の奥のあたりにある脳の松果体から分泌されます。“メラトニン”には体内時計を夜に合わせる働きがあるため、天然の眠剤として考えるとわかりやすいかもしれません。

原始的な環境では、日が沈んで暗くなり光の刺激がなくなると“メラトニン”の分泌が増え眠くなって入眠し、朝になり日の出と共に明るくなると“メラトニン”の分泌が抑制されて覚醒します。この、光に対する“メラトニン”の分泌の変化によって、睡眠覚醒のリズム、すなわち体内時計が調整されています。

夜更かしをして夜中までスマホやパソコン、テレビなどから光の刺激を受け続けていると、“メラトニン”の分泌が抑えられ、深夜になっても体内時計が昼のままになり、目が冴えてしまいます。

夜更かしの習慣は、深夜に覚醒して朝に眠くなる“夜型リズム”へと体内時計をずらしてしまうため、睡眠不足とはまた別の理由から、朝スッキリと起きられない原因となります。夜の寝つきが悪くなるほか、日中に眠気や立ちくらみ、頭痛、倦怠感などの時差ボケに似た症状を生じることもあります。遅刻や体調不良により社会生活(仕事や就学など)に支障をきたすようになると、“睡眠相後退障害”と呼ばれる病気の状態です」

光を使って体のリズムを整えよう

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夜ぐっすり眠りたいのになかなか眠れない……このようなタイプの人は一体どうすればよいのでしょうか?

「体内時計の“夜型リズム”が疑われる場合には、光を調整してリズムを整えることをおすすめします。

眠りたい時刻の遅くとも1時間前からはパソコンやテレビの画面、スマホなどの眩しい光を避け、夕焼けを作るつもりで部屋の照明も間接照明などを使って明るさを落としましょう。寝室の窓に遮光カーテンを使用している場合には、光を通す素材へ変更するなど、朝になったら寝室が明るくなるよう工夫をしましょう。朝食を摂ること、午前中に30分程度の日光浴をすることも体内リズムを整えるために役立ちます。

睡眠には自律神経のバランスも大切です。ぐっすりと眠るためにはリラックスした状態(副交感神経が優位な状態)を目指すことをおすすめします。入眠前は穏やかな音楽を聴く、ゆるやかなストレッチや好きなアロマを楽しむなどリラックスできそうなことを試してみましょう。

入眠前の入浴は、ぬるめの温度(39~40℃位)がおすすめです。リラックス効果が望めるほか、お風呂上がりに平素の体温に戻る(体温が1~2℃下がる)際に、入眠を促してくれます。熱いお風呂や、筋トレやマラソンの練習などの激しいスポーツは興奮した状態(交感神経が優位の状態)を作り、入眠を妨げるので避けましょう」

他にも気をつけることはありますか?

「寝室に快適なイメージを持てるよう工夫をしましょう。体に合った心地のよい寝具はもちろんですが、悩み事は布団に持ち込まないことも大切です。布団の中で考え事をしてしまい眠れない場合には、いったん別の部屋へ移動し、リラックスできそうなことを楽しみましょう。

布団の中で不安を抱えながら寝ようと頑張ってもなかなか眠れませんし、条件反射を起こして布団が考え事をする場所として定着し、習慣化すると不眠の原因となるためよくありません。

嗜好品にも注意が必要です。カフェインやアルコール、たばこは睡眠の質を悪くします。夜間はできるだけ避けましょう。寝酒としてのアルコールは寝付きをよくしますが、その後の眠りは浅くなります。また睡眠剤よりも依存症になりやすいため危険です」

 

体内時計のリズムの問題の他にも、睡眠時無呼吸症候群をはじめとする睡眠中の身体の問題や不眠症、過眠症など様々な睡眠の病気があるそう。

忙しく働くkufura世代の女性にとって睡眠は重要です。自分で工夫をしてもうまくいかない人は、専門医に相談をしてみましょう。


 

【取材協力】

柳原万里子

医学博士、日本睡眠学会睡眠医療認定医、日本呼吸器学会呼吸器専門医・指導医。睡眠総合ケアクリニック代々木に勤務。東京医科大学睡眠学講座客員講師。睡眠時無呼吸症候群をはじめ、概日リズム睡眠障害、中枢性過眠症、不眠症、睡眠関連運動障害などの睡眠障害全般に関して幅広く診療や臨床研究に従事している。共著『睡眠呼吸障害診断治療ガイドブック』(医歯薬出版株式会社)、『診断と治療のABC睡眠時無呼吸症候群』(最新医学社)など。

 

構成/kufura編集部

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